参院選挙制度改革 格差と合区救済に自民苦渋 定数増は埼玉・比例で野党に利も(産経新聞)

11日に参院を通過した自民党提出の公職選挙法改正案は、同党にとって苦渋の策だった。「一票の格差」是正に向けた選挙制度の抜本的見直しを迫られ、憲法改正による「合区」解消のめどが立たない中、次善策として格差是正と合区対象県救済を両立する改正案に踏み切った。一部の比例代表候補を優遇する特定枠は野党に「党利党略」と批判を浴びたが、実は定数増は野党に利点がある。(田中一世)

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 最高裁は昨年9月、「一票の格差」が最大3・08倍だった平成28年の前回参院選について「合憲」と判断し、その理由に27年施行の改正公選法の付則を挙げた。付則は、格差是正は不十分との観点から「選挙制度の抜本的見直しを行い、必ず結論を得る」と明記。与野党は来年の参院選までの抜本的な改革を司法に要求された。

 しかし、与野党参院の専門委員会で17回にわたり重ねた議論は各党の利害が複雑に絡み、かみあわなかった。自民党は合区対象県の支持者に「地方の声の切り捨てだ」と迫られていたこともあり、今回の改正案をひねり出した。

 野党は参院の審議で、合区対象県の候補を優先的に当選させることを目的にした特定枠を標的にした。国民民主党足立信也氏は11日の参院政治倫理・選挙制度特別委員会で「民意に無関係だ。党利党略でしかない」と批判した。

 対照的に、選挙区の定数増については、「身を切る改革」を掲げる日本維新の会希望の党以外の野党から表立った批判は出なかった。自民党の改正案では埼玉選挙区の改選定数が3から4に増え、これまで次点で落選していた候補が当選圏内に滑り込むことになる。過去の参院選を見ると、旧民主党共産党が次点で涙をのんだケースが多く、野党の方が恩恵を受けやすい。

 参院選挙区定数の「2増2減」案を提出した立憲民主党福山哲郎幹事長は9日、記者団に「抜本的な改革は急を要している。石川、福井をやむなく合区し、埼玉の定数を2増する」と説明し、一票の格差是正の観点から埼玉選挙区の定数増に理解を示した。

 選挙区に比べ「死に票」が出にくい比例代表の定数が増えることも、少数政党には利点がある。共産党は以前から「民意を正しく反映する」と比例代表制への移行を主張してきた。特定枠は、党幹部を優先的に当選させるなど他党が活用することも可能だ。

 参院野党第一党の国民民主党は、自民党改正案の審議入りに反対しなかった。維新が提出した参院倫選特委の石井浩郎委員長(自民)の問責決議案に他の野党は同調せず、伊達忠一議長の不信任決議案などのカードも切らなかった。維新の馬場伸幸幹事長は11日の記者会見で「わが党以外の野党はいつもより腰が引けている」と苦言を呈した。

 公明党も、現職が改選を迎える全国4選挙区の一つの埼玉や重視する比例の定数増はメリットがある。同党の山口那津男代表は10日の記者会見で定数増について「投票価値の平等を実現する方向性で、全く許容されないわけではない」と一定の理解を示した。

 ただ、11日に総務省が発表した人口動態調査を見ても今後の東京への一極集中と地方の人口減少は避けられず、今回の改正案も限界を迎えるのは間違いない。